コインロッカーベイビーズ

そうだ何一つ変わっていない、俺達がコインロッカーで叫び声をあげたときから何も変わってはいない、巨大なコインロッカー、中にプールと動物園のある、愛玩用の小動物と裸の人間達と楽団、美術館や映写幕や精神病院が用意された巨大なコインロッカーに俺達は住んでる、一つ一つ被いを取り払い欲求に従って進むと壁に突き当たる、壁をよじのぼる、跳ぼうとする、壁のてっぺんでニヤニヤ笑っている奴らが俺達を蹴落とす、気を失って目を覚ますとそこは刑務所か精神病院だ、壁は上手い具合に隠されている、かわいらしい子犬の長い毛や観葉植物やプールの水や熱帯魚や映写幕や展覧会の絵や裸の女の柔らかな肌の向こう側に、壁はあり、看守が潜み、目が眩む高さに監視塔がそびえている、鉛色のキリが一瞬切れて壁や監視塔を発見し怒ったりおびえたりしてもどうしようもない、我慢できない怒りや恐怖に突き動かされてコトを起こすと、精神病院や刑務所と鉛の骨箱が待っている。

 目を開けたら救命病棟の天井が目に入った。ぼくはコインロッカーの破壊に失敗した。
 あれから1年が経った。
 ぼくは相変わらずコインロッカーの中だ。それでも壮絶な戦いを続けている。命をかけた戦いだ。
 正直勝ち目はない。それでも戦わなければいけない。